美しさは重力

こんにちは!太眉です!

明日から2連休!うれしいです!

で、今は三浦綾子さんの『氷点』を読んでいます。舞台は戦後間もない頃の北海道です。

登場人物を簡単に

啓造は辻口病院の院長です。神経質で内省的、年は30代後半だと思います。大学時代からの友人、高木。冗談好きで無神経、でも場面によってはとても気を遣う。啓造の妻、夏枝。啓造と高木の担当教授の娘。美人でお嬢様でちょっと浮気性。啓造の部下、村田。眼科医で手先が器用、放蕩しがち、虚無的、女ぐせ悪い。

この物語の中心からは外れますが、太眉は夏枝の美しさが周りの男たちに多大な影響を与えている点に注目しました。

高木は在学中に夏枝と結婚することを強く望み、夏枝の父に「夏枝さんと結婚させて欲しい。」と直談判します。でも、夏枝の父は断ります。高木は「相手が啓造なら諦める。それ以外なら諦めない。」と言います。こんな情熱的なことを戦後の日本で言うのですから、たちまち噂になります。結局、この噂がもとで啓造と夏枝が近き、二人は結婚します。

高木はそれからずっと独身でいます。戦後の大卒、それもお医者さんです。話はたくさん来るはずです。でも、独身です。これは夏枝の影響があると思います。実際、高木は「なぜ結婚されないの?」と夏枝に問われた際、「夏枝さんに振られたからさ」とフツーに応えています。

村田もめっちゃ夏枝に振り回されています。村田は、夏枝が目に怪我をした際に診断、治療を担当した医師です。診察する中で夏枝に惚れ込みます。そして、関係を求めます。この小説の冒頭は、啓造邸で村田が夏枝を本気で口説くシーンから始まります。そして、夏枝は、それが何を意味するか知りながら、村田の告白を期待します。結局、村田は夏枝の、嫌よ嫌も~を察することができず、頬にキスだけして帰ります。その後、大事件が起こり、結核を患います。

夏枝の美しさのせいで、上司の妻に恋する苦しみを味わい、結核を患ったと言えます。

そして、啓造。優しく、理性的です。そして勘ぐるタイプ、根に持つタイプです。夏子と村田との関係を怪しみ、嫉妬します。また、二人の関係について正面から問いただせないことに苛立ちます。この啓造の苦しみは、夏子が女性として魅力的でなかったら生じ得ないものです。106ページの啓造と高木が二人でウイスキーを飲むシーンで、高木が「いろんな男の思いのかかったフラウ(妻)をもって、啓造もラクじゃなかろうな」と言います。まさにその通り。

夏枝の美しさは、高木を独身にとどまらせ、村田を狂わせ、啓造を嫉妬の炎に焼いています。

夏枝がいることは周りの人が影響を与え、人々の意思決定や行動が夏枝がいない場合とかけ離れたものになっています。

岡田斗司夫さんは、美しさを重力に例えました。

まず重力の説明を。教室に薄いゴムの膜を水平に張ります。そのピンと張った膜にビリヤード球を転がします。すると、玉は直線的に転がります。

次に、ゴム膜の中心に鉄球を落とします。膜は円錐状に凹みます。この状態で再度、ビリヤード球を転がします。玉は凹みに落ちるか、大きく軌道を変えカーブしながら転がります。

鉄球=重力 ビリヤード球=惑星

この考え方に、『氷点』を当てはめてみると

重力=夏枝 惑星=男たち

となります。こういう風に考えるとスッキリしますし、面白いですね。

橘玲さんの『マネーロンダリング』も同じ構造ではないでしょうか。

麗子の美しさが、アキにリスクを取らせましたし、アキの彼女を激ヤセさせ、マコトを文字通り狂わせました。そもそも麗子の母が美しくなければ、麗子の母はヤクザに手籠めにされることはなかったでしょう。そうすれば、麗子の母は激しい自傷行為を伴う精神疾患に侵されることもなかったでしょうし、麗子の父は自殺しなかったでしょう。3人は貧しいながらも暮らしていけたはずです。

ジブリのかぐや姫も、かぐや姫が不美人なら、公達たちは恥をかいたり財産を失わずに済みました。また捨丸兄ちゃんも妻に隠し事をせずに済みました。

美しさは、隠せない能力です。知能や運動能力はいくらでも手加減でしますが、顔の造形や体の魅力は隠し切れるものではありません。その意味で美人の人は不便な思いをすることもあるのでしょう。

確か岡田斗司夫さんの動画で聞いた話ですが、昔美人だった女優さんが「私の半生は寄ってくる男を引きはがすことに費やされてしまった。」と言ったそうです。

まあ、この構造がわかったからどうってことありません。「この構造似てる!」って思っただけです。

以上です。あっあと『モンスター』百田尚樹さんの。これも構造似てるますね。美人を扱う小説はそうなるんでしょうね。

おやすみ

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